SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のなかで、特定の人を標的とする誹謗中傷が社会問題になっています。匿名性に隠れて相手の人格を傷つける行為は、加害者が想像している以上に被害者を追い詰める危険性があります。
テラスハウスに出演していた女子プロレス選手・木村花さんが亡くなった背景にも、匿名のアカウントによるSNSの誹謗中傷があったといいます。
こうした情勢に対して、法務省は、総務省と一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構と連携して、SNS利用に関する人権啓発サイトを開設しました。今後、SNSの誹謗中傷について、国家として対策する流れが強まっていくかもしれません。
この記事では、SNSの誹謗中傷の実情、被害の事例、逮捕例、対策などの概要をまとめています。今、もう一度、私たちはインターネット上での発言について考える必要があると思います。
- SNSの誹謗中傷に関する基本を理解できる
- SNSの誹謗中傷で逮捕された事例などが知ることができる
- SNSの誹謗抽象への対応策について検討できる
SNSの誹謗中傷は被害者が泣き寝入りしやすい
日本財団が全国の17歳~19歳男女1,000人に実施した「18歳意識調査」によれば、SNSの誹謗中傷について、全体の12%が「被害経験あり」と回答しています。つまり、10人いれば1人以上はSNSで悪口を言われた経験があることになります。
第28回18歳意識調査「テーマ:SNS」調査報告書(PDF / 1MB)より引用(最終確認日:2020/8/23)
物理的な暴力と違って、誹謗中傷が与える心の傷は目に見えません。そのため、第三者に心理的負担について詳細に説明しなければなりません。これは、被害者にとって重荷になることだと思います。
また、加害者に対して法的手段を取るためには、SNSの運営会社に情報開示請求を行ったり、刑事・民事裁判の準備をしたりなど、お金も時間も必要になります。
以上のことからも、SNSの誹謗中傷は被害者が泣き寝入りしやすいといえるでしょう。インターネットは、だれでもアクセスできる開かれた空間です。
したがって、だれかを標的とする悪口やデマをつぶやけば、第三者は簡単に閲覧できます。それが相手の人生にどのような影響をもたらすのか。投稿する前に、少し考えてみたほうがよいと思います。
嫌なら見なければよいのか
SNSの誹謗中傷で悩む人たちに対して「嫌なら見なければいい」という方たちもいるかもしれません。
しかし、SNSをはじめインターネットが生活必需品となっている以上、「見たくなくても見てしまう」といったことが考えられます。また、悪口やデマを見聞きした知人から内容を聞いてしまうといったこともありえるでしょう。
いずれにしても、被害者の行動を制約するかたちで誹謗中傷の対策を強いるのは非現実的なのではないでしょうか?
誹謗中傷も表現の自由として認められる?
また、「表現の自由が認められているんだから、誹謗中傷も個人の自由だ」という意見もあります。たしかに、個人の言論が無闇に統制されるのは、憲法上の権利を侵害するおそれがあるので注意しなければなりません。
しかし、自由には責任が伴うはずです。もし、誹謗中傷の表現が個人に実害を与えるならば、民事訴訟を起こされたとしても文句はいえないと思います。
果たして、SNSで誹謗中傷を投稿する人たちは、そうしたリスクを取る覚悟をもって発言をしているのでしょうか。
SNSの誹謗中傷で逮捕された事例
とはいえ、実際にSNSの誹謗中傷で逮捕された人はいるのでしょうか?
結論からいえば、SNSの誹謗中傷で逮捕された人はいます。2020年7月21日までに、新潟を拠点として活動するアイドルグループNGT48のメンバー5人に対して、ツイッターで「覚醒剤使用のため、思考回路と人間の心が破壊されている」と投稿した男性が名誉毀損の疑いで逮捕されました。
また、民事裁判で訴えられることもあります。ジャーナリストの伊藤詩織さんは現在、ツイッターで誹謗中傷を受けたとして男性に損害賠償を求めて提訴しました。
これに関して、さまざまな意見が論じられていますが、伊藤さんの提訴には、「SNSの誹謗中傷がどこまで法的に裁くことができるのか」といった線引きを日本社会に提示する機会になると思います。
もちろん、事実を含めて司法の判断に結果は委ねられると思いますが、SNSの誹謗中傷が罪に問われる時代になってきたといえるでしょう。
誹謗中傷に対処する専門家が増えている
こうした情勢のなかで、SNSの誹謗中傷に対処する専門家が増えています。Googleで「SNS 誹謗中傷 相談」と検索すると、リスティング広告の欄に、法律事務所などが検出されます。
もし、読者のみなさんがSNSの誹謗中傷に悩まれているのなら、思い切って専門家に相談してみるのもよいと思います。一人で悩んで精神的に追い詰められるよりも、だれかに相談して対処することが大切です。
SNSの誹謗中傷は、一人の被害者に対して集団で悪口が浴びせられるような構図になりがちです。だからこそ、一人になっていけません。だれかの力を借りて、現状を打開する必要があると思います。
投稿する前に考えること
SNSが情報メディアの主要ツールとなった今、これまでのように匿名を隠れ蓑にした無法地帯の言論は顧みられ始めています。
私たちはデバイスを介して現実で生活する人間と繋がっています。物理的には、スマートフォンの画面かもしれませんが、言葉に宛先がある以上、だれかに届くのです。投稿する前に、自分の発言が他人に及ぼす影響を考慮することが求められています。
だれかを傷つけるためではなく、社会をよりよくするために話し合う場所として、SNSを活用することが大切だと思います。