格言のルネサンス

エイブラハム・リンカーンの名言・格言|強き意思の根にあるもの

格言のルネサンス コンセプト

格言のルネサンスvol.002は、大手医療ITメーカーで活躍する石賀謙さんの人生に刻まれるエイブラハム・リンカーンさんの格言を通して、「強き意思を支えるもの」についてインタビューしました。前に向かって進むには、後ろの支えがいる。一体、何が石賀さんを強くするのでしょうか。その所以を伺いました。

【石賀謙(いしが・けん)さんのプロフィール】 

1990年生まれ。大阪出身。大学卒業後、医療や介護のシステムを作るITメーカーに就職。一年目で新人賞を取り、三年目には全国1、2を争うトップ営業マンとして活躍する。元シュートボクシングのプロ。

学生時代に出会ったエイブラハム・リンカーンの格言

エイブラハム・リンカーンの格言
森本恭平

石賀さんの心に刻まれる格言は何ですか?

石賀謙さん

僕は、アメリカ合衆国第・エイブラハム・リンカーンさんの「意思のあるところに道は開ける」という言葉が好きですね。

森本:エイブラハム・リンカーンといえば、黒人奴隷制度の廃止を訴えた偉人として有名ですね。南北戦争を勝利したあと、暗殺されてしまいました。

石賀さんは「意思のあるところに道は開ける」という格言との出会いは何だったのでしょうか?

石賀さん:『ビリギャル』という映画を見ていたとき、主人公の先生が彼女を励ますために引用していたんです。

当時、僕は弁護士になるために司法試験の勉強をしていたのですが、思うようにいかず「自分の意思はどこにあるのか?」と悩んでいました。だから、この格言が心に響いたのだと思います。

森本:司法試験は長期戦ですからね……。みなさん、人生を賭けて自分と戦っていると思います。そもそも、なぜ弁護士を目指していたのでしょうか? 

石賀さん:これは、僕の生い立ちに関わることで少し長くなってしまうのですが、大丈夫でしょうか……?

森本:もちろんです! むしろ、ありがたいくらいです。ライフストーリーを語るには「勇気」がいると思います。人間の物語を失った言葉の再興、生き様から格言を語る価値を現代に取り戻す。これが「格言のルネサンス」の趣旨です。

石賀さん:ありがとうございます。僕は今でこそ、大手医療メーカーのトップ営業マンとして働いていますが、高校時代までは手をつけられないほどの非行少年でした。

特にやりたいこともない。だけど、力はあり余っている。親や他人に迷惑をかけたと思います……。

高校一年生のとき、これまでのツケをすべて支払うことになりました。このままでは人生が終わる。学校もほとんど行っていなかったので、高校の先生からは、「次のテストで全教科80点以上取らないと進級できない」といわれました。立て直すなら、今しかないと思って勉強することにしたんです。

森本:これまでのツケを支払う……。何となく状況を察します。それにしても、どうして非行に走ったのでしょうか? 何か理由があったのでしょうか?

石賀さん:そうですね……。正直なところ、グレた理由なんてなかったように思います。自分がどこに向かえばよいのか分からず、知らぬ間に流されていたのかもしれません。

森本:行き先を失っていたから、非行の道に迷い込んだ。たしかに、大人たちは子どもたちの行動に何かと複雑な理由を求めがちなのかもしれません。

特に、「親の愛情が足りない」や「経済的に苦しい」などの理由づけは偏見になりやすく、本人の両親が聞けば傷つくおそれがある。

石賀さん:そうですね。ある種の現実逃避だったんです。それも他人を犠牲にするからタチが悪い。元ヤンが頑張っているという「美談」がよくありますが、それを聞いて不快に思う人たちもたくさんいるはずです。

森本:そうでしょうね。「自己正当化の罠」には注意が必要だと思います。ともすれば、私たちは都合の良いように世界を見てしまいがちだけど、自覚の有無にかかわらず、やったことはやったことでちゃんと残っている。

石賀さん:だから、謙虚さがなければいけません。もちろん、いつまでも過去に縛られて自分を偽って生きることがよいとも思いません。ただ、何もかもひっくるめて美談にするのではなく、汚かったことはそれとして認めたうえで、前進するから「等身大の自分」でいられるような気がします。

森本:考えさせられますね……。

石賀さん:弁護士を目指そうとしたのは、難しい挑戦に思えたからです。元々、大きなことを実現したいという気持ちがありました。そして、どん底にいる自分が大きな夢を実現すれば、同じような境遇にいる人たちの希望になるかもしれない。そう決めてからは、まっすぐに努力しました。

当時の僕からすれば、先行きなんて全く想像もできないチャレンジでしたが、だれも未来なんて知りっこないのだから、自分なりに意思を定めることからスタートしたんです。

森本:たしかに、未来はだれにも予測できません。それにもかかわらず、現状を分析して可能性を限定しようとする言説が世の中には溢れています。

石賀さん:はい。ただ、現実は甘くありませんでした。必死に勉強して四年制大学の法学部に入って、弁護士を目指して勉強しましたが、全然うまくいかなかった……。

決めたことを曲げるのが嫌でたまらなかったから、こだわり続ける自分がいる。でも、いつの間にか弁護士になることが目的化しているような気がして、もう一度、自分を深く見つめ直す必要がありました。

森本:自分の決めた道を変える。それもまた勇気がいることですね。そして、「意思」と「選択」の距離感に関わる絶妙な問題です。一歩間違えれば、過去の奴隷になりかねない。

さきほどの意見と少し矛盾する表現かもしれませんが、「選択それ自体が意思を表現する場合」と「選択が意思を実現する手段である場合」を見極めないといけないですよね……。難問だ(笑)

変わっても、変わらない意思の根っこ

男のシルエット写真は日没時に海の近くの崖にジャンプします
森本恭平

どのようなときに、石賀さんはリンカーンさんの格言を思い出しますか?

石賀謙さん

行き詰まったときというか、前が見えなくなったときに「意思あるところに道は開かれる」って自分に言い聞かせていますね。

石賀さん:突き詰めて考えていくうちに、大きな夢を実現して、だれかに希望を贈りたいというのは変わりませんでした。ただ何よりも、身のまわりにいる人たちの笑顔が見たいっていう気持ちが本当の「意思」だと気づいたんです。

森本:弁護士は手段だったわけですね。これは一種の社会問題かもしれませんが、司法試験に失敗して行き詰まりを感じている人たちもたくさんいるのではないでしょうか。

石賀さん:そうですね。予備試験は例外として、弁護士になるには大学を卒業して、新司法試験を受ける資格を取得するために「ロースクール」に通わなければなりません。最低でも6年はかかります。

一回で合格すればよいですが、二回、三回と失敗するうちに選択肢が奪われていくような感覚がある。勉強したことは無駄にはなりませんが、自分の心が「これまで、一体何をやってきたのだろう」と塞ぎ込んでしまう方たちもいると思うんです。

森本:部外者からすれば、それだけ勉強できる力があるなら、思い切って方向転換してみてもよい気がするのですが……。

石賀さん:口でいうのは簡単ですが、6年間を費やしてきたことを変えるのは、本当に「勇気」がいります。何というか、今まで自分を否定するような気持ちになることもあると思うんです。心なしか「逃げ」なのかもしれないと悩むこともある。

でも、変わっても変わらない意思の根っこが大切だと気づきました。素直な気持ちで大事にしていることが何かあるはずなんです。表層的な変化が自分の意思を壊すわけじゃない。僕の場合は、妻や子どもを守りたい。身のまわりにいる友人たちと一緒に何かを実現したい。その気持ちだけは変わらなかったんです。

森本:自分が大切にしている根本の価値に気づいたから、勇気を出して変わることができた。不確実な時代を生きる上でも、重要なポイントのような気がします。

障がいを個性として活かせる社会を創りたい

仕事中の石賀さん
森本恭平

今の石賀さんは、何を目指されているんですか?

石賀謙さん

僕は、障害を個性として活かせる社会をつくりたいと思っています。将来は、自分で事業を起こしたいという気持ちもあります。

石賀さん:障がいに限ったことではないのですが、社会的に弱いというレッテルを貼られている人たちが自分の個性を活かして活躍できる社会をつくりたいですね。

森本:どうして、そう思うようになったのでしょうか?

石賀さん:うまく言葉にできないのですが、僕は小さい頃から青年海外協力隊に憧れていました。小学校のとき、アメリカのシアトルに留学したのも、その夢を叶えるためでした。ただ、9.11同時多発テロの影響でビザが更新できず、泣く泣く帰国したのですが……。

こうして大人になっても、「だれかを守りたい」という気持ちは変わりません。「守りたい」というのは「弱いから」ではなく、みんなが個性を発揮して活躍できる場を作りたいというニュアンスですね。自分自身がそういう社会で生きていたいという願いのようなものです。

森本:とても純粋な気持ちだと思います。実は、僕は高校生のときに交通事故にあって、左手首に重度の神経障害が残っています。常に痛みがあって、握力は右手の4分の1程度しかありません。

日常生活に支障はありませんが、痛みは目には見えず、人にも伝わりづらい要素なので、自分なりに後遺症と向き合っていますね。

石賀さん:そうだったんですね。現実の障がいは人によって本当にさまざまだと思います。言葉では一括りにされてしまうけど、人生に及ぼしている影響や考え方もまったく違う。性質上、だれかの力をかりないと日常生活が送れない人たちもいます。

でも、だれだって人の力を借りないと生きていけませんよね。自分の着る服だって、食べるご飯だって、だれかの力を使って初めて着たり、食べたりできる。あとは程度の問題です。完全に独力で生きていける人なんていない。

森本:同感です。人間である以上、他人の力を借りるのは当たり前のことだと思います。自立とはいえ、他者という大地の上で成り立つことです。

また、生きている以上、だれしもが老いるわけですから「病」によって体や心に障がいを負う可能性がある。その意味では、だれもが「当事者」になり得るといっても過言ではないと思います。

石賀さん:そうですね。障がいに関する意見は白熱化しやすいので、当事者ではない人たちが意見を交わすことが避けられがちですが、社会全体の問題です。自分たちが生きやすい社会をつくっていくためにも、「健常と障がい」という単純な枠組みではなく、「一人の人間」という視点を忘れてはいけないと思います。

森本:そうですね。「健常と障がい」の二項対立で現実を捉えようとすれば、一人ひとりの物語が見失われてしまう。石賀さんが医療メーカーにどのような想いで携わっているのか、少し見えてきたような気がしました。

本日は、格言のルネサンスに協力してくれて本当にありがとうございました!

エイブラハム・リンカーンの名言4選

エイブラハム·リンカーンアート 無料画像 - Public Domain Pictures

最後に、読者のみなさんにエイブラハム・リンカーンの格言をご紹介したいと思います。

Always bear in mind that your own resolution to succeed is more important than any other.(つねに成功に向かって不屈の想いを抱いていく。これこそが他の何事にもまして大切なことである)

America will never be destroyed from the outside. If we falter and lose our freedoms, it will be because we destroyed ourselves.(アメリカが外から壊されることは決してありません。もし、私たちが混乱し、自由を失うならば、それは私たちが自分自身を破壊したことによるものでしょう)

You can not fail in any laudable object, unless you allow your mind to be improperly directed.(あなたの心が誤った方向に行かない限り、どんな高邁な目標でも達成できないということはない)

Character is like a tree and reputation like a shadow. The shadow is what we think of it; the tree is the real thing.(人格は木のようなものであり、評判とは影のようなものである。影は私たちの考えたことであって、木が本物なのである)

心に響く言葉の語り手は真摯な生き様とともにある。

格言のルネサンスは人類の言葉が新しい価値、未来を創造する明日を目指します。

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PENDELION編集部
PENDELION編集部はライター・構成担当・編集担当・グロースハッカーから成り立っています。専属のライターさんが執筆した記事に関しては、希望がある場合にのみプロフィールを掲載します。