みなさんは、SNS依存症という言葉を聞いたことありますか?
SNS(ソーシャル・ネット・ワーキングサービス)が普及して、24時間、どこにいても人とコミュニケーションが取れる時代になりました。その一方で、SNS疲れや悪質ないじめなどネガティブな問題も発生しています。
どんなもので使い方次第で良くも悪くもなる。SNSの依存もまた仕組みによって人びとが不幸になる社会問題のひとつです。
この記事では、学術論文に記載される内容に基づき「SNSの依存度」をチェックする方法、原因、対策を紹介しています。SNSとの距離感を考えたい方たちのお役に立てば幸いです。
※ただし、これはあくまでもPEDNELION編集部のリサーチャーが集めた情報から構築した内容なので、絶対的なものではないことに注意してください。
- SNSの依存度を簡単にチェックできる。
- SNSに依存する理由についてわかる。
- SNS依存からの脱却に役立つ知識を得られる。
SNSの依存度をチェックしよう!
東京大学の河合大介さんなどが執筆した『SNS依存と利用実態とその影響』の論文では、SNSの依存度を確かめる方法として8つの項目が紹介されています。
SNS依存症の項目 | 状態 |
---|---|
もともと予定した時間よりもSNSを利用してしまう | はい・いいえ |
SNSを利用していないときも、SNSのことを考えてしまう | はい・いいえ |
SNSを利用しないと落ち着かなくなったり、憂うつになったり、気分が落ち込んだり、いらいらする | はい・いいえ |
SNSの利用時間を減らそうとしても、失敗してしまう | はい・いいえ |
長時間SNSを利用しないと、満足できなくなっている | はい・いいえ |
落ち込んだり、不安やストレスを感じたりするとき、逃避や気晴らしにSNSを利用している | はい・いいえ |
SNSの利用が原因で家族や友人との関係が悪化している | はい・いいえ |
SNSを利用している時間や熱中している度合いについて、ごまかしたり、嘘をついたりしたことがある | はい・いいえ |
上記の表にある項目のうち、5項目以上に「はい」と答えた方は、SNSに依存しているかもしれません。みなさんは大丈夫だったでしょうか?
IAT(インターネット依存)も調べてみよう!
このほかにも、久里浜医療センターのHPでは「IAT : Internet Addiction Test (インターネット依存度テスト)」を無料で行うことができるので、気になる方はこちらのボタンから飛んでみてください。
実際、PENDELION代表にテストしてもらった結果はこちらです。
IAT : Internet Addiction Test (インターネット依存度テスト)より引用(最終確認日:2020/6/26)
SNSに依存する理由
それにしても、なぜSNSに依存してしまうのでしょうか。これに関しては、心理学者の岡安孝弘さんが執筆した『インターネット依存の心理社会的影響およびリスク要因に関する研究の動向』を参照したいと思います。
あくまでも「インターネット依存」という広範囲に関わる研究ではありますが、これらのリスク要因はSNS依存にも関連性が高いのではないでしょうか。
本記事は岡安さんの研究を参照しているだけで、岡安さんの意見を代弁しているわけではありませんので注意してください。
理由1 ソーシャルスキルの違い
第1の理由として、ソーシャルスキルのを挙げられます。ソーシャルスキルとは、他者とのコミュニケーションを通じて、何らかの目標を実現する能力のことです。
例えば、「あの人と仲良くなりたい」と思っている気持ちを実現する態度やトーク力は「ソーシャルスキル」と呼ぶことができるでしょう。その違いがSNS依存に影響するというのは、具体的にどういうことなのでしょうか?
これに関しては、岡安さんの論文で紹介されているCaplanの研究が参考になるかもしれません。以下、該当箇所の引用です。
ソーシャルスキルの低い大学生ほどオンラインでのコミュニケーションを好む傾向が高く、それが強迫的にインターネット利用頻度を高め、社会的機能を低下させるという因果モデルが妥当であることが検証された。ソーシャルスキルの低い者は、フェイストゥフェイスよりもオンラインでのコミュニケーション場面において,安心感や有能感、自信、楽しさを強く感じることによってオンラインで長い時間を費やす傾向が強いため、インターネット依存状態に陥りやすいと考えられる。
岡安孝弘(2015)『インターネット依存の心理社会的影響およびリスク要因に関する研究の動向』より引用(最終確認日:2020/6/26)
たしかに、対面では話せないことでもメールやラインなら伝えられるといったこともあります。その意味では、オフライン状態の対人関係に自信が持てない人ほど、SNSのコミュニケーションに依存するリスクが高いといえるのかもしれません。
理由2 心理社会的ストレスを感じている
第2の理由として、心理社会的ストレスに曝されていることが挙げられます。心理社会的ストレスとは、仕事、家庭、学校など日常生活のなかで感じるストレス全般を指しています。
岡安さんが紹介する研究によれば、SNS依存の傾向にある人ほどストレスフルな出来事を経験しているといいます。
Yan、 Li. Sui (2014) は、中国の大学生を対象として過去12ヶ月に経験したストレスフルイベントとインターネット依存との関連性について検討し、重度の依存者は対人関係や学校関係を始めとしてあらゆる領域のストレスフルイベントの経験が多いことを報告している。
岡安孝弘(2015)『インターネット依存の心理社会的影響およびリスク要因に関する研究の動向』より引用(最終確認日:2020/6/26)
理由3 神経質傾向・孤独感が高い
第3の理由として、神経質傾向および孤独感の高い傾向にあることが挙げられます。具体的には、次のような研究結果があるといいます。
たとえばAmichai・Hamburgerand Ben-Attzi(2003) は,イスラエルの大学生を対象にインターネット利用行動とパーソナリテイ特性および孤独感との関連性について検討した。その結果、Eysenck性格検査による外向的な男子学生は情報サービスやレジャーサービスを目的としてインターネットを利用する傾向が高いが、神経質傾向および孤独感の高い女子学生はSNSを目的とする傾向が高いことが示された。また因果モデルの分析から、女子学生において、神経症傾向が孤独感を高め、その結果としてSNS目的のインターネット利用頻度が高められることが示された。
岡安孝弘(2015)『インターネット依存の心理社会的影響およびリスク要因に関する研究の動向』より引用(最終確認日:2020/6/26)
「寂しい」という気持ちが強い人たちがSNSを通じて、「だれかと繋がっていたい」と思うのは自然なことかもしれません。
しかしながら、近年では「家出少女」や「家出少年」がSNSを利用して縁もゆかりもない人たちに助けを求めた結果、犯罪に巻き込まれる事件も発生しています。孤独につけ込む黒々とした欲望には注意しましょう。
SNS依存がもたらす悪影響
河合大介ほか(2011)『SNS依存と利用実態とその影響』から引用(最終確認日:2020/6/26)』
SNSに依存することで悪影響はあるのでしょうか? 『SNS依存と利用実態とその影響』に掲載されるアンケート調査の結果によれば、非依存者と比べて、依存者には次のようなネガティブな影響があるようです。
- 視力が低下した
- 眠れなくなった
- 情緒不安定になった
- ひきこもりになった
- 健康が悪化した
上記の症状がある方は、速やかに専門家に相談しましょう!
SNS依存の予防対策
それでは、SNS依存の予防対策として、何をどうすればよいのでしょうか? ここでは、大きく3つの方法を紹介します。
予防策1 健康的な趣味を見つける
まず、健康的な趣味を見つけるといった予防策があります。例えば、適度な運動や芸術鑑賞は心身に良い影響を与えることが予想されます。
何事も始める前までが「めんどくさい」かもしれませんが、やってみれば意外と楽しいものばかりです。「今更、趣味なんて……」と思う方もいるかもしれませんが、考えるよりも前にやってみないと習慣は変わりません。
「どうすればいい?」と答えばかりを求めて時間を潰すのではなく、フットワークを軽くして行動してみましょう! 「それができたら苦労しない」論は、ちょっとした思い込みかもしれません。
予防策2 SNSを利用しない時間を決める
続いて、SNSの利用しない時間を決めることも有効な予防策です。近年では、「デジタルデトックス」といってスマートフォンやPCを利用しない時間を作り、デバイスと距離を置くストレス発散法が注目されています。
専用のアプリケーションもあるので興味のある方は利用してみてください。
スマ禁
設定した時間が終了するとAMAZONギフト券と交換できるポイントがもらえる。
スマホをやめれば魚が育つ
スマホを放置した分だけ魚が成長するのでゲーム感覚で楽しみことができる。
これらのツールを土日や長期休暇に利用する習慣を身につければ、SNSと適度な距離感を取ることができるかもしれません。
予防策3 専門家に相談する
「SNS依存症かもしれない……」と心配されている方は、専門家に相談しましょう。
近年では、入院プログラム、外来など依存症から抜け出す治療も多様化しています。
一人で抱え込んで深刻化するまえに、だれかに相談しましょう。
自分の生活を豊かにするために使おう!
SNSは便利な道具です。しかし、その使い方を間違えれば、思わぬトラブルを招くおそれがあります。自分の生活を豊かにするためにも、利用目的をはっきりさせることが大切です。
また、SNS依存という問題がある一方で、「SNS疲れ」も広がっているといいます。SNSによって人との繋がりが見えるようになった一方で、デバイスを介して他人に縛れられる感覚に嫌気が指している人たちも多いようです。
くわしくは、こちらの記事をご覧ください。
SNSに関する知識を身につけて、楽しく使いましょう!