近年、個人だけではなく企業がTwitterを運用するケースも増えてきています。 たくさんの人たちに自社のコンテンツやブランドを発信する施策としても、Twitterは有効な手段のひとつです。
その一方、他人の著作権を侵害するようなモラル・ハザードやウソの情報を拡散するフェイクニュースなど悪質な情報発信も問題になっています。
今回はTwitterの利用者であれば、だれもが被害にあうかもしれない「パクツイ」について説明します。パクツイの違法性や対処方法についてまとめているので、個人や企業でTwitterを使っている方々のお役に立てば幸いです。
目 次
パクツイとは?
パクツイとは「パクリツイート」の略称で、他人のツイートを盗用して、自分のツイートのように発信することをいいます。
例えば、以下のようなケースが「パクツイ」に当てはまります。
BさんはAさんのツイートの内容をコピー&ペーストして、それを自分のアカウントで投稿した。
このほかにも、文章をコピー&ペーストするのではなく、表現をうまく言い換えた悪質なパクツイもあるので注意が必要です。
パクツイはダメ、絶対!気になる違法性は?
ツイートの内容が著作物の要件を満たしている場合、それをパクツイすることは著作権法違反になると考えられます。
すなわち、パクツイは違法行為とみなされる可能性があるのです。
弁護士法人みずほ中央法律事務所公式HPに公開される【『著作物』の定義(基本・創作性の判断基準)】には、著作権の定義として、次のように記載されています。
<『著作物』の定義>
あ 条文規定
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう
※著作権法2条1項1号
い 著作物の要素
『ア〜エ』のすべてに該当するものが著作物である
ア 思想or感情
イ 創作的(創作性・後記※1)
ウ 『表現』したもの(※2)
エ 文芸・学術・美術・音楽の範囲に属する
弁護士法人みずほ中央法律事務所公式HP【『著作物』の定義(基本・創作性の判断基準)】から引用(最終確認日:2020/3/14)
上記の内容に該当するツイートは著作物になるので、それをパクる行為は著作権の侵害になります。
被害者が告訴した場合には、著作権法第109条に基づき処罰される可能性があるかもしれません。
第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第三項の規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、同条第四項の規定により著作権若しくは著作隣接権(同条第五項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第三号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第六項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第四号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
電子政府の総合窓口e-Gov著作権法(最終確認日:2020/3/14)より引用
ソースは少し古いですが、弁護士ドットコムニュースの『他人のつぶやきを盗んでツイートする「パクツイ」 弁護士が「著作権法違反」と警告』の記事のなかで、弁護士の柿沼太一さんは次のように述べています。
「『著作物』と言えるためには、ある程度の創作性が必要です。パクられるようなツイートであれば、通常は創作性があるでしょうから、著作物であることが多いと考えられます。
したがって、パクツイ行為は、他人の著作物について、作者の名前を表示せずに、無断で複製・公衆送信していることになり、著作権侵害となります。
より具体的には、複製権や公衆送信権、氏名表示権などの侵害ということになるでしょう」
弁護士ドットコムニュース 他人のつぶやきを盗んでツイートする「パクツイ」 弁護士が「著作権法違反」と警告から引用(最終確認日:2020/3/14)
「いやいや、実際のところは訴える人なんていないでしょ?」と思われる方もいるかもしれませんが、SNSが当たり前のように使われるようになった現代では、時間・労力・お金をかけてツイートを投稿している方がたくさんいます。
パクツイによって自分の努力が踏みにじられていると思えば、訴えを起こす人が出てこないとは決していえません。
「自分に限って大丈夫だろう」というのはパクツイ犯の希望的観測であり、自分を安心させるための「偏見」です。
また、個人を特定する技術も急速に進んでいます。決して良いことではありませんが、ニュースで個人名を伏せているにもかかわらず、卒業アルバムの写真まで調べられてしまうほど、インターネット社会では情報が共有されています。
そのため、訴訟を起こされなかったとしても、パクツイから個人名が特定され、社会的信用を失う可能性もあります。
デジタルの世界は記録が残るため、一度やってしまったことを簡単に消去できません。「これくらいは許されるだろう」という軽率な行動は控えるべきなのです。
なぜ、パクツイは起こるのか?
それにしても、なぜパクツイは起きるのでしょう? その最大の理由は、自分のアカウントを拡散することにあると考えられます。
その背景には、「いいね!」やリツイートで「自分が注目されたい!」「すごい人間だと思われたい!」といった承認欲求を満たすためだけではなく、他人のツイートを悪用して集客を行い、アドセンスやアフィリエイト等で収益化したサイトへアクセスさせる狙いがある場合もあります。
Twitterでは、自分の投稿したツイートがフォロワーのリツイートで拡散するだけではなく、フォロワーのフォロワーがリツイートすることで連鎖的に広がっていく「バズる」という現象があります。
パクツイ犯は他人のツイートを使って自分のアカウントをバズらせることで収益を得ている可能性があるのです。
パクツイの被害にあったときにすべきこと
それでは、パクツイの被害にあったときには、どうすればよいのでしょうか? ここでは代表的な対応策を3つほど紹介します。
対応策その1 パクツイ犯に警告する
第一の対応策として、ダイレクト・メールやコメントを使用して、パクツイ犯に「パクツイ」の事実を示して、Twitterの規約違反及び著作権の侵害行為に当たりうることを警告する方法があります。
例えば、次のような警告文を送信することで、パクツイ犯が自分の行為を見直す機会をつくることができるかもしれません。
○○○○(アカウント名) 様
はじめまして、△△(警告者のアカウント名など)と申します。この度、当方のツイート内容に盗用が疑われるものが見つかりましたので、確認させて頂きたく御連絡いたしました。
盗用が疑われるツイート
【ツイート内容】
【日付】
酷似するツイート
【ツイート内容】
【日付】
ツイート内容の盗用はTwitterの規約違反及び著作権を侵害する行為に当たる場合がございます。
【期限日】までに上記のツイートを投稿した経緯についてご説明いただきますよう、よろしくお願い致します。なお、盗用をお認めになる場合は速やかに削除及び謝罪いただきますよう、重ねてよろしくお願い致します。
【期限日】までに返信を頂けない場合、当方といたしましては、ツイート内容の盗用は極めて悪質な行為として然るべき措置を取る所存です。
なかには、ルールを知らない人もいるので、注意喚起から始めるのが良策でしょう。
対応策その2 Twitterに報告する
第二の対応策として、Twitterの著作権に関するポリシーに基づき、専用フォームから違反者を報告するといった方法があります。
Twitterヘルプセンター著作権侵害について報告するから引用(最終確認日:2020/3/14)
ただし、上記の画像にもあるように、Twitterは日本語での完全なサポートを提供していないので、Twitterからの回答が英語になる場合があることを留意しておきましょう。
対応策その3 パクツイ犯のアカウントを拡散する
第三の対応策として、パクツイ犯のアカウントを公開することが挙げられます。
これによってパクツイ犯がTwitter内で信用を失えば、常習行為を防止できるかもしれません。
ただし、これはパクツイを確実に立証できる準備を整えたうえで、行うべき対処方法です。
もし、証拠が不十分の状態でパクツイ犯のアカウントを公開すると、逆に名誉棄損や侮辱として攻撃される可能性があるので注意しましょう。
Twitterの目的を忘れないように!
パクツイは良識なユーザーの利用環境に不利益をもたらすだけではなく、ネット社会に著作権侵害を横行させる脅威のひとつです。
現状では見過ごされているケースがほとんどのようですが、AIをはじめとする技術革新が進展すれば、パクツイが即時に検出されるようになるかもしれません。
Twitterは、インターネットという公共の場で交わされるコミュニケーションに貢献することを目的としています。この前提を踏まえたうえで、一人ひとりを大切にして、楽しく利用することを心がけていきましょう。