ライティング

ライターが業務委託契約書を交わす際に注意すべき5つのこと

一般的に、副業・フリーランスのライターが企業から仕事を受注するときは業務委託契約を結びます。業務委託契約とは、自社の業務を外部の企業や個人に依頼するために取り交わす契約のことです。

発注と受注の関係に加えて、法人対個人の契約ですから、ライターの立場は弱くなりがちです。法律の専門家からアドバイスを受けたいところですが、それは負担として割に合いません。

また、発注側もライターに過剰な負担をかけると、パートナーとしての信頼関係を形成できずに、満足のいく成果物を得られない可能性があります。

この記事では、ライターが業務委託契約を結ぶ際に注意すべきことを5つにまとめました。これは雇う側も意識すべき内容であると思います。

すべてをピックアップできているわけではありませんが、PENDELION編集部のライターが感じてきたリアルなポイントです。ライター、オウンドメディアに関わる人たちの参考になれば幸いです。

業務委託契約書とは?

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業務委託契約書とは、自社の業務を外部の企業や個人に任せるときに結ぶ契約書のことです。人を雇うよりも外部に委託したほうが安価で効率よくタスクを処理できる場合に利用されています。

民法では業務委託契約に関する定めはありません。この点に関しては、弁護士法人阿部・楢原法律事務所の公式HPで公開されている「業務委託契約についての注意点」の記事が参考になるので引用しておきます。

業務委託契約とは、「一定の業務の遂行を他人に委託する契約」だと言われています。もっとも、民法その他の法律には「業務委託契約」というものが定められているわけではありません。この点、学問上は、業務委託契約というのは、民法の「請負契約」(民法632条)または「委任契約」(民法643条。以下、本コラムでは準委任契約(民法656条)も含むものとします。)の性質を有すると考えられています。しかし、世の中にある業務委託契約は、様々な要素を含んでいることから、「請負契約」と「委任契約」の2つに正確に分類することは困難だとされています。そうすると、契約内容を民法の定めに委ねることが難しくなります。したがって、作成した契約書だけで契約内容の全てが分かるようにしなければならない、という点で他の契約類型よりも契約書の作成に重大な意義があるとされています。

弁護士法人阿部・楢原法律事務所の公式HP「業務委託契約についての注意点」 から引用(最終確認日:2020/3/16)

WEBライティング業界では、専属ライターとして働く方もいますが、副業やフリーランスとして企業と業務委託契約を結んで、記事を作成する方もたくさんいるので、知識としておさえておきましょう。

業務委託契約を結ぶ前に注意すること

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それでは、ライターが業務委託契約書を結ぶ際の注意点について確認していきます。

注意1 競業避止義務は慎重に!

第一の注意点は、「競業避止義務の有無」です。競業避止義務とは、発注者と競合する他社に対してサービスを提供してはならないという制約のことを指します。

すなわち、発注側が運営するメディアと同じジャンルの仕事は他の企業から受けないでください、という内容です。

具体的には、次のような条文が記載されている場合は、競業避止義務が課されているので注意しましょう。 なお「競業禁止行為」という名称で記載される場合もあります。

競業禁止行為

乙は、本契約期間中、甲の事前の書面(電子メール等を含む)による許可を得ずに、甲の【事業名】及びこれに類似する事業に関し、専ら自己または同業他社の利益を図るためにライティング業務を行ってはならない。

※乙はライター、甲は企業です。【】内はライティング案件に関する事業が入ります。

ライターは専門分野に特化して執筆する場合が多いので、同種の企業との取引を禁止されると、収入が低下するおそれがあります

そのため、発注者は競業避止義務を契約書に記載する場合には、事前の説明をしっかりと行わなければなりません

これに関しては、公正取引委員会競争政策研究センターの「人材と競争政策に関する検討会報告書」(平成30年2月15日)に次のように記載されています。

○ 競争手段の不公正さの観点からは、発注者(使用者)が役務提供者に対して義務の内容について実際と異なる説明をし、又はあらかじめ十分に明らかにしないまま役務提供者が秘密保持義務又は競業避止義務を受け入れている場合には、独占禁止法上問題となり得る

○ 優越的地位の濫用の観点からは、優越的地位にある発注者(使用者)が課す秘密保持義務又は競業避止義務が不当に不利益を与えるものである場合には、独占禁止法上問題となり得る

公正取引委員会競争政策研究センターの「人材と競争政策に関する検討会報告書」 から引用(最終確認日:2020/3/16)※強調は筆者

また、競業避止義務を課す場合、競業避止義務を課さない場合の報酬と同等の金額を設定するのは、ライターにとって不利な条件を一方的に提示することになります。

したがって、他の案件から発生し得る収入が失われることを念頭に置いて、それ相応の対価を支払うべきではないでしょうか

一方で、発注側の立場からすれば、ライターが競合他社のメディアで同じテーマの記事を執筆するリスクは避けたいところです。

業務委託契約書に競業避止義務を盛り込む意図としては、上記のような心配があると思われます。

そのため、自社が発注した記事と同じキーワードまたは同じ内容を示すタイトルの仕事は受けない、といったピンポイントのルールを決めることをおすすめします。

注意2 違約金はあるのか?

第二の注意すべきポイントは「違約金の有無」です。違約金とは、受注側の責任で契約内容が破棄された場合に、一定の金額を支払うといった罰金的なものです。

芸能人が犯罪に手を染めるなどして引退せざる得ない状況になったとき、CMやドラマが使えなくなって、関連企業から莫大な違約金を請求されるといった話はよく耳にしますよね。

ライター業界も同様に、業務委託契約で違約金が設定された場合、受注側のミスで記事が納品されなかった罰金として請求されることがあります。

例えば、違約金の条項は次のように記述されます。

発注者の契約解除権

受注者は、【違約金の発生条件を示す条項】によりこの契約を解除された場合は、【契約金額の10分の1に相当する額】を違約金として、発注者の指定する期限までに発注者に支払わなければならない。

※【】は契約書によって異なりますが、「正当な理由がなく、契約上の業務を履行せず、又は履行する見込みがないと明らかに認められるとき」といった内容が定められていることが多いです。 また、違約金の額も契約書で違います。

発注者は違約金を定めることで、委託した仕事を不当に放棄されるリスクを下げることができます

とはいえ、副業でライターをやっている方は、本業で忙しくなった場合に契約で定めた業務を処理できなくなるおそれがあるため、違約金の有無は必ず確認しておきましょう

もちろん、できないことをできるというのは良くありません。相手も一定のルーティンで事業を回している以上、業務を放棄されると大きな損害につながります。

ただ、状況というのは自分の予想に反して変わっていくものです。そのため、「0か100か」ではなく、「中途解約」という契約内容を途中で解除する項目を設定しておいたほうがよいでしょう。

注意3 諸経費はどこまで認めれるのか?

第三の注意すべきポイントは「諸経費の範囲」です。諸経費とは、委託された業務を行う際に発生する費用のことです。

実際のところ、インタビューの交通費や関連書籍の購入費などは報酬の金額に含まれている場合が多いので、受注する際は「いくら収益があるのか?」をはっきりさせておきましょう

注意4 ポートフォリオに使えるのか?

第四の注意すべきポイントは、納品した記事をポートフォリオとして活用できるのかを確認しておきましょう。ポートフォリオとは、これまで書いた記事の実績を集めた作品集のことです。

報酬の多い仕事を受注するためには、ポートフォリオの内容を充実させる必要があります。

しかし、発注先によっては記事を書いた事実をポートフォリオとして公開できない可能性があるので事前に相談しておきましょう

例えば、「甲乙協議のうえ、当該コラム記事において文責者として乙の氏名を表示する場合がある」のような文言を「成果物に関する権利」の条項に加えてもらうなどの交渉の余地はあります。

成果物に関する権利

1 成果物に生じた著作権は、創作時において乙に原始的に帰属する。

2 前項により乙に帰属した著作権(著作権法第27条及び第28条に定める権利を含む) は、【納品方法を示した条項】に基づき甲に納入された時に、甲に移転帰属するものとする。この場合において、乙は、著作者人格権を行使しないものとする。ただし、甲乙協議のうえ、当該コラム記事において文責者として乙の氏名を表示する場合がある

※【】内は○○条○○項などの文言が入ります。

なお、著作者人格権とは、クリエイターの名誉や作品への思い入れを守る権利のことです。クリエイターに著作者人格権がある場合、著作権は譲渡しても、著作物の加筆・修正は勝手に行うことができません

すなわち、記事の内容を変える場合は、ライターの許可を取ってくださいという話になります。発注先としては面倒なので、「それを行使しないでくれ」という文言があるわけです。

ただ、記事を書いて納品するだけの仕事は、心なしか寂しい気持ちになります……。

もちろん、ライターはクライアントの要望を実現してこそ仕事になるのですが、クリエイティブな仕事ですから、愛着が生まれるのは当然ですよね

この辺はクリエイターの悩みどころですが、PENDELIONでは、ライターの希望があれば名前を載せることもできますし、ポートフォリオとして自由に使ってください、という方針にしています。

なお、ポートフォリオを作成するおすすめツールを知りたい方は、こちらの記事を参照してください。

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注意5 納品までの工数を確認する 

第五の注意すべきポイントは納品までの工数を確認することです。ここでいう「工数」とは、記事作成までに発生する業務のステップを指しています。

通常、記事作成は次のような過程で行われます。

  1. クエリの選定
  2. ユーザーのニーズ/市場(競合)の分析
  3. 構成案の作成
  4. ライティング
  5. 校正・編集
  6. 最終確認
  7. 投稿

しかし、発注先の委託内容は千差万別です。構成案をつくって依頼するところもあれば、キーワードだけ指定するところもあります。

それによって記事作成の工数が変わるので、時給に換算したときに割に合う仕事なのか、を確認する必要があります。

業務委託契約を交わした後になって、「え!?構成案も自分で作らないといけないの!?」といったことにならないのように、発注先と打ち合わせしておきましょう。

とはいえ、発注者が記事作成に人員を割けない場合、②から④までの仕事を依頼することが多く、ライターの負担が大きくなっているのが実情だと思います。

記事は書くという仕事で成り立つ

記事は「書く」という仕事から成り立っています。「書く」ためには「読む」必要があり、読むためには「考える」必要があります。

これは思っている以上に労力のかかる仕事です。そのため、発注側と受託側のフェアなパートナシップがなければ、継続性は見込めません。

また、発注者のなかには安価で効率よく業務を処理できればよいとだけ考えているところもあります。上記の注意点を踏まえて、実りある案件を開拓することが大切です。

※この記事は定期的に更新していきます。

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