ユーザーが集まるコンテンツを作り上げるにはどうすればよいのでしょうか?
グロースハックでは、ユーザービリティを高めるフレームワークとして「AARRRモデル」が使われており、オウンドメディアの開発・運用に有益な視点を与えてくれます。
この記事では、AARRRモデルの意味と詳細について解説しています。コンテンツ作成に携わる方のお役に立てば幸いです。
AARRRモデルとは?
AARRRモデルとは、ユーザーがコンテンツを利用するところから収益化するまでのプロセスを表したフレームワークです。
ベンチャーキャピタルとして有名な500 startupを設立したアメリカの起業家・デイブ・マクルーアさんが提唱しました。
AARRRは「アー」と発音し、各段階を表す英語の頭文字を並べた造語です。
- Acquisition:新規ユーザーの獲得
- Activation:利用開始
- Retention:継続利用
- Referral:ユーザーによる拡散
- Revenue:収益化
AARRRモデルの使い方!
AARRRモデルをオウンドメディアの設計に活用するには、各段階の特徴をおさえておく必要があります。
例えば、サブスクリプション(会費徴収)型のオウンドメディアを設計する場合、AARRRモデルは下記の表にある観点からコンテンツを設計します。
Acquisition:新規ユーザーの獲得
「Acquisition:新規ユーザーの獲得」では、人々がコンテンツを認知・利用するまでの導線を検討します。
従来のマーケティング的な発想でいえば、売り物のメリットをユーザーに分かりやすく定義して、広告・宣伝・営業を行うといったことが考えられます。
具体的には、SEO対策、リスティング広告、YOUTUBEやSNSを使った広告、テレアポなどの手法が挙げられるでしょう。
なお、検索エンジンからのマーケティングを検討されている方は、以下の記事をご覧ください。
グロースハックの視点でいえば、マーケティングに加えて、コンテンツが利用される瞬間を想像して「ユーザーにとって有益な仕様は何なのか」を検討します。
いわゆる、UI(ユーザーインターフェース)の設計です。
実践面でいえば、グロースハックとマーケティングを区別することは困難です。
優れたマーケッターはグロースハック的な思考をもっています。
「Acquisition:新規ユーザーの獲得」 では、売り方だけではなく、初期のユーザーがコンテンツを信頼して利用する動機を徹底的に分析して成長戦略を構築します。
Activation:利用開始
「Activation:利用開始」とは、ユーザーがコンテンツを利用してメリットを実感する段階です。
「需要と供給のマッチングは成功したのか」が最大のポイントになります。
ユーザーの問題を解決する情報がコンテンツに含まれていたとしても、実際に、ユーザーが満足しなければ意味はありません。
そのため、「ユーザーが満足する体験」を構築することが求められます。これをUXデザインといいます。
また、新規ユーザーからフィードバックを得て改善行動を繰り返すことによって、コンテンツをブラッシュアップすることが重要です。
Retention:継続利用
「Retention:継続利用」とは、ユーザーがコンテンツを継続して利用するリズムをつくる段階を指しています。
ここでいう「リズム」には大きく2種類ある、といってよいです。
ひとつは、ある時・ある場所・ある状況(TPO)で繰り返される人間の行動です。
例えば、通勤時間・電車の中で・暇だった場合、人々は本を読んだり、スマートフォンでゲームをしたり、居眠りをしたりしていますよね。
このリズムに相性の良いコンテンツを提供することで、ユーザーは一定の頻度で利用する可能性があります。
もうひとつは、コンテンツを利用するほど満足度が高まったり、メリットが増えるたりするユーザービリティの設定です。
ポイント還元やランク制度などを具体策として挙げることができます。
競合他社が提供する同様のサービスよりも、自社のものを使ったほうが良い理由を分かりやすく実感できる仕組みが必要です。
特に、ユーザーが利用頻度に応じてコンテンツとの関わり方を発展させることがポイントになるでしょう。
【Retentionのフェーズ 例】
Referral:ユーザーによる拡散
「Referral:ユーザーによる拡散」とは、ユーザーが人々にコンテンツを広告・宣伝する段階です。
あくまでもコンテンツ次第ですが、「Referral:ユーザーによる拡散」への参加ハードルは低いことが望ましいです。
日本では、ネットワークビジネスの悪用による問題が頻発しています。
手法それ自体はマーケティングの一環として利用されていますが、インターネット社会で人を巻き込むプロセスには慎重さが求められます。
もし、ユーザーが間違った情報や人々に不利益をもたらす方法で広告・宣伝を行ってしまうと、企業とコンテンツの信頼に傷がつくおそれがあります。
そのため、だれもが同じ情報を拡散する仕組みを設定したほうがよいです。
Dropboxの事例
Dropboxは「Referral:ユーザーによる拡散」を実現した有名な事例です。
Dropboxは、ユーザーがTwitterやFacebookなどのSNSをフォローしたら125MBの追加容量をプレゼント。さらに、ユーザー友人を紹介すれば、お互いに500MBをゲットできるキャンペーンを企画を実施しました。
これによって、Dropboxは圧倒的な成果を生み出しました。
2012年に収益が約1億1,600万ドルに到達
2017年の収益は約11億ドル
2014年に約100億ドルの企業価値が付いて約2億5,000万ドルを調達
24時間ごとに1約0億個のファイルが保存されている
2億人以上のユーザー登録数
500人以上の従業員
約2億5千万台のデバイスにインストール
https://neilpatel.com/blog/dropbox-hacked-growth/(最終確認日:2020/2/17)から引用 ※PENDELION編集部で翻訳
Revenue:収益化
「Revenue:収益化 」とは、ユーザーがコンテンツの利用料金を支払う段階です。
近年では、無料サービスで拡散してから有料プランを提供するといったモデルが流行しています。
ただし、一歩間違えると、ユーザーが大量に離脱するリスクがあるので注意しましょう。
「有料に切り替えるのはダメなのか?」といえば、決してそうではありません。
大切なことは、適正価格の設定、無料と有料の差別化です。
適正価格は、ユーザーの家計簿を想像したうえで「費用対効果」の満足度を損ねることのない料金を設定する必要があります。
また、無料と有料の差別化については、有料サービスへの期待値が高まるほど、無料サービスの満足度が下がるといった仮説を前提とした戦略があります。
音楽ストリーミングサービスSpotify(スポティファイ)を事例に挙げてみましょう。
Spotifyには無料と有料のプランがあり、両者を比較してみると次のようになります。
「今までは無料プランを使っていたけど、自分の好きなタイミング音楽が聴けて広告も全くない有料プランは便利かも……」と期待するユーザーが何人いるのか、がポイントになります。
これを検証する方法のひとつに「有料プランの無料お試し期間」の実施があります。
例えば、データ分析の結果から、8割以上のユーザーが有料プランに満足するといった仮説を立てたとして、無料お試し期間後のユーザーの離脱率を調べれば検証することができます。
無料プランと有料プランの満足度が変わらないのであれば、ユーザーは無料を選びます。
しかし、有料プランの満足度が高く、リーズナブルな価格であれば、無料プランに戻る可能性は低くなると考えられます。
いずれにしても、ユーザーの期待を裏切らないサービスの提供が求められます。
人間は損を避けるようにできています(=損失回避の法則)から、 「Revenue:収益化 」 の段階では、ユーザーの立場を想像して収益モデルをつくる必要があります。
AARRRモデルでグロースハック!
AARRRモデルは、コンテンツを作成するにあたって、ユーザーの視点を考えるのに重要な視点を与えてくれます。
みなさんもAARRRモデルを使ってグロースハックをオウンドメディアの開発・運用に取り入れてみてはいかがでしょうか?